業務引継書の作り方とは?項目・ポイント・テンプレート等も紹介

組織に属している会社員の多くは、転勤や異動が避けられません。ときにはさまざまな事情により、退職する方もいることでしょう。これらのケースでは引継書が作成されますが、その品質は人によりさまざまです。もし内容に不足があったり、誤りがあったりするとその都度問い合わせが必要となり、業務を停滞させかねません。

あなたが今の職務を離任する際には、後任者が業務しやすい引継書の作成が重要です。これは、離任の理由があなたの望まないものであったとしても同様です。これにより経営者や後任者から感謝され、評価も上がります。

本記事では業務引継書をどのように作成すればよいか、ポイントを取り上げ解説していきます。

目次

業務引継書とは

業務引継書は、あなたが担当していた業務の内容を後任者に引き継ぐ文書です。引継書に書かれる内容は職種により異なりますが、代表的な項目は以下のとおりです。

・引き継ぐ業務名や、業務の内容
・業務の進め方
・業務スケジュール
・業務遂行の際に注意すべきポイントや、イレギュラーな事態への対処方法
・業務に関する情報の保管場所
・顧客名や顧客に関する情報の保管場所

業務引継書に決められたフォーマットは、特にありません。内容が伝われば、どのような形式で書かれていてもよいといえます。

業務引継書に載せる項目

業務引継書はフォーマットが自由なだけでなく、記載するべき項目にも明確な決まりが設けられていません。それでも一般的には下記のような項目が業務引継書にまとめられます。

1 概要・目的・業務全体の流れ

業務の全体像や目的を明らかにし、後任者に対して業務の役割についての理解を深めてもらいます。これらは業務引継書の中で最も重要な項目です。

自分が担当する業務の役割を理解することで、業務に対する知識を身につけられ、主体的に業務に取り組むことができるのです。複雑な業務であれば、どう表現すれば後任者の理解を得られるのか工夫をする必要があります。

また、自分の業務に関係する社内外の関係者や、担当業務の前後の業務など直接は関わらないが関連する業務や、その関係者なども記載しておきましょう。そうすることで、より自分の業務に対する理解が深められます。

2 スケジュール・優先度

業務を行うためのスケジュール・優先度・タイミングなどをまとめる項目です。これらの項目が明らかであれば、納期の遅延などによって、顧客や取引先に迷惑をかけてしまうトラブルが予防出来ます。

また、その業務の開始や完了に誰の承認が必要なのか、その承認プロセスについても記載することで、より正確なスケジュールを計画することが可能になります。

3 引き継ぐ業務の進行状況

業務の引き継ぎはベストなタイミングでできるとは限りません。業務が一区切りついたところで引き継ぎできれば一番分かりやすくて良いですが、誰かの承認待ちであったり、お客様からの回答待ちであったり、中途半端なタイミングで引き継ぎを行わなくてはいけない場合も多いでしょう。

業務がどこまで完了しているのか、どこから未完了なのかが分からなければ、後任者は何から手をつければ良いのかが分りません。

口頭による説明だけでなく、業務引継書でも現段階の引き継ぐ業務の進行状況を明らかにしてください。

4 問題発生時の対応について

引き継ぐ業務でミスやトラブルが発生してしまった時の対処法について、過去の事例を参考に記載し、必要な対応をまとめておきます。

些細なトラブルが企業の信用問題に関わることもあることを理解し、問題発生時のフローを明らかにしてください。

緊急連絡先が分かっていれば、トラブル発生時も適切な指示を得た上で冷静に正しい行動が取れるのです。

5 関連する資料の保管先・参照先

後任者が書類を探すことに無駄な時間を使わないよう、関連する資料の保管先や参照先をまとめておきます。

同時に関係者の連絡先も一覧にしておくと、あれこれと調べる手間を省いて効率よく業務が進められます。

また、資料の保管方法についても説明を残しておくことで、後任者は自分が業務の中で作成した資料の取り扱いについても迷うことがなくなります。

業務引継書を作成するメリット

業務引継書を作成するためには時間と手間がかかりますが、その分得られるメリットも大きいです。ここでは業務引継書を作成するメリットについてまとめました。

メリット1 担当者が変わっても業務がスムーズに進む

ほとんどの場合、業務は担当者が変わる度に一時的に問題が発生しやすくなるものです。

業務効率が下がるだけでなく、引き継ぎが上手くいかなかったことが原因で大きなトラブルが発生してしまう事例も少なくありません。

もちろん、後任者が引き継ぎと同時に前任者と同じ知識や経験を身につけるのは不可能ですが、業務引継書によって業務を進めるために最低限必要な知識を理解しておけば、問題なく業務を遂行出来るのです。

また、業務引継書があることで、業務への理解が不足して他の業務担当者のサポートが必要となり、複数の業務の効率を下げてしまうような問題も防げます。

メリット2 後任者が安心して業務に取り組める

新しい業務を引き継いだ後任者は誰しも不安を感じています。十分な知識が得られていないまま前任者が別の部署に異動してしまったり、退職してしまったりすれば、安心して業務に取り組めません。

業務引継書は後任者の不安や焦りを原因としたトラブルを予防し、モチベーションを高めるためにも役立ちます。

メリット3 引き継ぎにかかる時間を短縮出来る

業務の引き継ぎには一定の時間が必要ですが、何らかの原因でその時間が十分に用意出来ないことも珍しくありません。その結果、後任者の理解があいまいになったり、後任者の疑問が解決できないままになったりする可能性が考えられます。

業務引継書があれば、引き継ぎに必要な時間を短縮出来るだけでなく、引き継ぎ完了後に前任者と後任者が何度も連絡を取り合うような手間も省けるのです。

メリット4 業務効率化につながる

業務引継書を作る際に、現在の業務内容を客観的に捉えることが出来るため、自然と業務を精査し、改善可能な点はないか見直すことが可能になります。

改善点を反映した業務引継書を作成できれば、後任者に引き継いだ後はよりスムーズに業務が進行するでしょう。業務引継書は業務効率化にも役立つのです。

業務引継書を作成する上で重要なポイント

引継書は、ただ作ればよいものではありません。現場で役立ち、経営者や後任者から感謝される引継書にするためには、以下の4つのポイントを重視して作る必要があります。

ポイント1 抜けや漏れを防ぎ、プライオリティの高い内容から書き始める

引継書は、後任者が問題なく業務を遂行できることが最も重要です。たとえその業務に詳しくない方が後任者として着任したとしても、独力で問題なく業務を遂行できる品質が求められます。

したがって引継書は、抜けや漏れのないよう作成することが欠かせません。このためには、担当する業務を事前に一通りチェックすることが重要です。特に慣れている業務を引き継ぐ際には意識せず行っている手順もありますから、1つ1つの手順を意識して書き出すことが抜けや漏れを防ぎます。

加えて「重要なことは最初に書く」ことは、引継書でも変わりません。このため、プライオリティの高いものから順に書くことも重要です。

ポイント2 後任者が使いやすいことを重視する

後任となる方は、あなたが担当していた業務に詳しいとは限りません。ときには、一から学ばなければならない場合もあるでしょう。もし説明が不十分である場合は、あなたが離任した後もサポートし続けなければならないかもしれません。

このため引継書はその業務に詳しくない方でもスムーズに理解できるよう、わかりやすく記述することが求められます。疑問や誤解が生じないことも重要ですから、「面倒くさい」と思わずていねいに記載することが必要です。図を活用することも、よい方法の1つです。

ポイント3 要点を簡潔、かつ的確に記入する

引継書は、ボリュームがあれば良いものではありません。後任者は多忙な業務のなかで時間を割き、最短の時間でどのような業務を行えばよいか知る必要があります。

このため引継書は、なるべく簡潔な表記が求められます。わかりやすさを損なわない範囲で、なるべく的確かつ短い表現を使いましょう。箇条書きや表の利用は、わかりやすさと簡潔さを両立できる点でおすすめです。

ポイント4 上長や顧客に判断を求めるポイントは特に正確に

どの業務でも、担当者1人で完結できる業務は多くありません。上長や顧客に判断を求めるケースは、少なからず発生します。この判断が適切に行われない場合、企業の信用や業績に大きな悪影響をおよぼしかねません。

このため上長や顧客に判断を求めるポイントは申し送り事項として、正確に記入する必要があります。後任者はどのようなケースに遭遇するかわからないわけですから、可能な限り経験したケースについて、簡潔かつ漏らさず記入することが求められます。

業務引継書は1週間前までに完成させるのが理想

業務引継書は引き継ぎが開始する1週間前までには完成させ、しっかりと引き継ぎの準備をしておくことをおすすめします。

引き継ぎが決定次第すぐに作成に取り掛かり、内容を精査しながらより優れた内容に修正を繰り返してください。作成した業務引継書は前任者がいなくなった後も業務マニュアルとして長く活用できるように、誤字や脱字に注意して、内容については上司に確認をしながら作成を進めるべきです。

ほとんどの場合は数日で業務引継書を完成させることは難しく、完成までに最低でも1ヶ月以上の時間を必要とする場合が多いでしょう。引き継ぎを行うまでの期間が短い場合は難しいかもしれませんが、実際に業務を進行しながら、同時に業務引継書を作成できると良いでしょう。

業務引継書の作成の流れ

業務引継書を作成する時には、次の流れを参考にしてください。事前準備を十分に行った上で作成に取り掛かれば、スムーズに業務引継書が作れます。

1 準備

業務引継書をいつまでに完成させるか、社内外の関係者へいつ周知するのか、後任者に業務を説明するタイミングなどのスケジュールを立てます。引き継ぎ前は慌ただしくなる可能性が高いため、時間に余裕を持ったスケジュールを考えてください。

また、業務引継書に盛り込む作業や情報、引き継ぎに必要な資料を洗い出し、集めておきます。

引継書のフォーマットが決まっていなければ、どのような形式や書き方で作成するのかも決定する必要があります。複雑な業務であれば、イラストや写真、動画を使用するなど、業務内容を伝わりやすくする方法の検討も必要です。

すぐに業務引継書の作成に取り掛かりたいと考える方もいると思いますが、準備が整っていない状態で作成を進めると、重要な項目が漏れてしまったり、分かりにくい業務引継書になったりする可能性があります。

2 作成と確認

実際に業務引継書を作成します。業務引継書の作成に必要な時間は該当の業務内容によって変わり、場合によっては非常に多くの時間が必要な場合もあります。

また、作成した業務引継書は一人で確認を済ませるのではなく、誤字脱字などのミスがないか、内容に誤りや問題点がないかなど上司や第三者に見てもらうべきです。アドバイスをもらうことで、より質の良い業務引継書が作成出来ます。

業務引継書は複数回の修正を繰り返しながら、完成度を高めていくものだと考えてください。

3 引き継ぎ

先ほど説明したように実際の引き継ぎの1週間前までには業務引継書を完成させ、引き継ぎを行います。引き継ぎに多くの時間がかけられない可能性もありますが、後任者の疑問を解決できるよう、時間的な余裕を十分持つべきです。

後任者の理解が不足したまま引き継ぎを済ませてしまうと、ミスやトラブルの発生確率は上がってしまい、引き継ぎ後も後任者からの質問に対応しなくてはいけなくなる事態になります。

引き継ぎのスケジュールについては、自分・後任者・上司と相談しながら最適な時間を用意してください。

業務引継書を作成する際の注意点

業務引継書を作成するためには、このほかにも注意しておきたいポイントがあります。ここでは3つのポイントを取り上げ、それぞれ解説していきます。

注意点1  業務が全体のなかでどのような位置づけになるか明示し、重要度を共有する

企業で行われている業務は、それぞれ重要度が異なります。重要度の一例として、以下のものがあげられます。

・毎日必ず実施しなければならない
・いかなる事情があっても期日厳守
・数日延ばしてもよい
・多忙ならばやらなくてよい

業務引継書の作成には、各業務に関する重要度も共有する必要があります。これにより、後任者がスムーズに業務を行う助けとなります。

注意点2  必要な人がすぐ使える場所に保管しよう

もし後任者が決まっている場合、引継書は後任者が責任をもって保管するべきものです。しかしビジネスの現場においては、離任時点で後任者が決まっていない場合も少なくありません。

その場合、引継書はわかりやすい場所に保管することがおすすめです。もちろん保管場所を周知徹底することは欠かせませんが、職場の方がよく目につく場所に保管しておくと、探す手間などが省けるため助かります。

注意点3  未完了事項は漏れなく記載を

引き継ぎ時点において未完了の案件があるケースは、少なくありません。もし後任者がこのことを知らないまま業務を進めてしまうと、トラブルに結びつきかねません。このことは、ぜひとも避ける必要があります。

そのため引き継ぎを行う際には、以下の事項を漏れなく記載することが重要です。

・未完了事項の項目や内容
・それぞれについてどこまで進んでおり、後任者は何をしなければならないか

業務引継書と一緒に渡すとよいもの

業務引継書と一緒に、ノウハウやコツ、業務の流れを図式したワークフローチャート、業務を一覧化した業務リストを後任者に共有できれば、業務引継書の中で伝えきれなかった情報も業務に役立ててもらえます。

特にノウハウやコツは、非常に有益な情報ですが、担当者本人にしか分からない情報です。必須のタスクではないものの業務をスムーズに進めるために個人的に行っていたことは、後任者も知りたい情報です。引き続き後任者に行ってもらうことで、担当者が変わっても業務がスムーズに進行するでしょう。

引継書に便利なテンプレート

後任者に引き継ぐ内容は、個々の業務によって大きく異なります。このため、引継書は一から作成しなければならないとお考えの方も、多いかもしれません。

実際には引継書にも、豊富な種類のテンプレートが存在します。ここでは無料テンプレートを提供している代表的なサイトを紹介し、それぞれの特徴を解説していきます。

1 事務引継書『ひな形の知りたい!』

「ひな形の知りたい!」サイトでダウンロードできる事務引継書は、Wordで提供されるひな形です。記載が必要な項目は以下のとおりと、シンプルであることが特徴です。

・年月日
・引継者と引受者(後任者)
・引き継ぎ事項
・処理未了事項
・その他備考

一方でフォーマットの自由度が高いため、業務の実態にあわせて柔軟に対応できることも特徴です。特に「引き継ぎ事項」の項目では箇条書きや表、図などを挿入できるため、見やすく使いやすい引継書に仕上げることが可能です。

2 業務引継書テンプレート『経費削減実行委員会』

「経費削減実行委員会」のテンプレートサイトは、項目がシンプルであることが特徴です。特に、引き継ぐべき業務が多岐にわたる場合に便利です。

書類に記載する内容は、大きく以下の8つに分けられます。

・年月日
・所属部署、役職、氏名
・後任者
・引継完了日
・引継業務
・備考
・引継書類
・チェックボックス

それぞれの項目には、詳細な内容が書かれるわけではありません。むしろ位置づけとしては「引継書類の表紙」に近いものとなります。このため引き継ぐべき内容そのものは、他の書類で作成する必要があります。

3 年間・月間スケジュール『Carrer Sign』

職務によっては、毎月、または毎年決められた時期に業務が発生する場合もあります。一例として、給与計算や経理の業務があげられます。このような職務を引き継ぐ場合は、業務スケジュールもまとめておくことが求められます。

「Carrer Sign」では、年間スケジュールと月間スケジュールそれぞれを記載するテンプレートを用意しています。項目を埋めるだけでよいので、多忙な方でも手軽に業務スケジュールを作成でき、業務を引き継ぐことができます。

業務の引き継ぎは、あわただしいなか進められることが多いです。そのためいろいろなテンプレートを探している時間はないと思う方も、いるかもしれません。

このようなケースに対応するため、経費削減実行委員会では「業務引継セット」を用意しています。1つのExcelファイルのなかに、以下のシートがセットされていることが特徴です。

・目次(引き継ぎ内容全体を記入するシート)
・スケジュール(10日間用、マンスリー用、デイリー用)
・補足資料
・業務引継報告書

このテンプレートに沿って必要事項を記入していけば、業務の引き継ぎに必要な書類が完成する点が魅力です。

toaster teamで普段の業務をナレッジとしてまとめておこう

 

業務の引継書類は、必ずしも書面で用意したり、ファイルとして残しておいたりする必要はありません。重要なことは、後任者がスムーズに業務を行えることです。そのため、何らかの形で引き継ぎ事項がドキュメント化されていればよいわけです。

この点では、toaster teamも適するツールです。貴社の関係者だけがログインできる専用サイトで作成することで、ドキュメントを簡単に共有できます。これにより引継書にはドキュメントのありかを示せばよく、手間が省けます。

さらに、普段から業務におけるノウハウをナレッジとしてまとめていれば、離任が決まってからあわててドキュメントを作成する必要もありません。このため、引き継ぎの際に文書を作成する手間が大幅に軽減できます。

このように普段の業務をtoaster teamを活用しナレッジとしてまとめることで、業務引き継ぎの手間を大幅に軽減することが可能です。業務の引き継ぎを楽にするために、toaster teamの活用をご検討ください。

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