インサイドセールスの立ち上げ方:ステップとポイントを解説

インサイドセールスとは、電話やメール、Web会議システムなどを用い、非対面で行う営業手法のことです。従来の営業手法であるフィールドセールスに比べて、少ない人員・短い時間で営業活動を進められるのが特徴です。
感染症対策をしながら営業活動ができるというメリットもあり、ここ数年でインサイドセールスを導入する企業も増えました。

しかし、突然「インサイドセールスを始めるように」という指示を受けた場合、何をどうしたら良いのか分からずに困ってしまう方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、インサイドセールスを立ち上げるために必要なステップとポイントについて解説します。インサイドセールスの導入を検討している方は、ぜひご一読ください。

目次

インサイドセールスを立ち上げるための4ステップ

まずは、インサイドセールスを立ち上げるために欠かせない4つのステップをご紹介します。

STEP1 インサイドセールスで注力する商品やサービスを決定

まずは、インサイドセールスで営業をかける商品やサービスを決定します。
複数の商品やサービスを扱っており、その全てをインサイドセールス化したいと考えている場合でも、インサイドセールスが軌道に乗るまではその数を絞った方が良いでしょう。一部の商品やサービスのインサイドセールス化によって、インサイドセールスの組織や仕組みが確立された後に、その他の商品やサービスのインサイドセールス化を検討するべきです。

また、インサイドセールスには次のような種類があります。

【代表的なインサイドセールスの種類】
・リード(見込み顧客)獲得からクロージングまでほとんどの営業活動をインサイドセールスで行う
・リードの獲得のみをインサイドセールスで行う
・リードを獲得してコミュニケーションを取り、ホットリードの育成までをインサイドセールスで行う

インサイドセールスによって全ての営業活動を行うことも可能ですが、多くの企業では上記②③のように営業プロセスの一部をインサイドセールス化し、フィールドセールスと分業することで、より営業活動を効率的で生産性の高いものにしています。また、顧客の希望や反応に応じて臨機応変にインサイドセールスとフィールドセールスを使い分けるという方法もあるでしょう。

自社に最適な方法でインサイドセールスを導入しなくては、期待する成果が得られなくなってしまうため、インサイドセールスの種類選定は慎重に行う必要があります。

STEP2 シナリオ設計とKPI設定

インサイドセールスの業務をスムーズに進めるためには、テレアポなどでアプローチする際のシナリオを設計する必要があります。
顧客に提供する情報とそのタイミングが分かるフローをシナリオとして共有できれば、インサイドセールス担当者の能力が標準化され、誰もが即戦力として活躍できるでしょう。

【インサイドセールスのシナリオで顧客に提供する情報の例】
・顧客に役立つ情報をまとめたもの
・自社の商品やサービスの導入事例やインタビュー
・無料トライアルの告知
・キャンペーンの案内

「最初にちょっとした情報を開示して、リードの興味を引いてから具体的な内容に進める」という流れが、テレアポの一般的なトークスプリクトになります。また、スムーズにシナリオ作成を進めるためには、ターゲット層を明確にしておくことも忘れないようにしましょう。

インサイドセールスのシナリオ作成と同時に行うのが、KPIの設定です。インサイドセールス担当者の評価基準であるKPIを設定する作業です。
誰にでも分かりやすい定量的な指標(KPI)を基準として示せば、担当者のスキルアップやモチベーションの維持は行いやすくなります。

このKPIの作成には分かりやすさを重要視し、完成したKPIは社内で共有・可視化し、浸透させてください。

STEP3 組織構築と配置・採用・教育

インサイドセールスに求められる能力は、フィールドセールスに求められるものとは異なります。そのため、フィールドセールスで優れた成績を収めている営業担当が、必ずしもインサイドセールスに向いているとは限りません。
インサイドセールスの人材配置や採用には、過去の実績だけでなく個々のスキルや適正を見極めることが必要です。

また、組織構築後は配属した人材にインサイドセールスの意義を十分に理解してもらう必要があります。インサイドセールスはフィールドセールスに比べて成果が見えにくいため、しっかりとしたキャリアパスを用意し、正しい評価を実施しながらスキルアップを促すと良いでしょう。

STEP4 営業ツールの導入

インサイドセールスの導入をスムーズに進めるためには、次のような営業ツールの導入が欠かせません。

【インサイドセールスに役立つ営業ツールの例】
・営業活動や案件の進捗管理を行う営業支援システム
・顧客情報を管理して営業活動指針にする顧客管理システム
・業務に必要な情報を一元管理する情報共有システム

上記以外にも、オンラインで顧客との商談ができるWeb会議ツールなど、インサイドセールスには非常に多くの支援ツールがあります。

インサイドセールスとフィールドセールス間で情報共有が滞ってしまうと、ホットリードを逃してしまうことにもなりかねません。そのため、情報共有を徹底し、営業活動を効率良く進めるための手段として、このような営業ツールを活用しましょう。
ツールの導入については、実際にツールを使用する現場の意見も取り入れながら、選定を行うと良いでしょう。

インサイドセールスを立ち上げる際のポイント


インサイドセールスを立ち上げる際には、次の9つのポイントを意識する必要があります。

・リード・ホットリードを定義する
・目的と目標を明確にする
・周囲の協力を得る
・決裁者がコミットする
・リソースとKPIを整理する
・ターゲットを明確にする
・評価基準を決める
・トークスクリプト・マニュアルの作成
・できることから徐々に進める

各ポイントについて詳しくご説明します。

ポイント1 リード・ホットリードを定義する

インサイドセールスでリードまたはホットリードを生み出し、フィールドセールスに引き継ぐスタイルの営業活動で発生しやすいのが、「リードやホットリードの認識のズレ」です。
インサイドセールスがリードだと認識して商談設定をした顧客が、フィールドセールスの認識では見込みの薄い顧客だったなどといった事例が、実際によく起こっています。

両者にこのような認識の違いが生まれてしまうと、営業活動の効率化は叶いません。それを避けるために、インサイドセールス立ち上げ時には、リードおよびホットリードの定義を明確にし、インサイドセールス・フィールドセールス双方の認識を一致させておきましょう。

ポイント2 目的と目標を明確にする

インサイドセールスの立ち上げにあたっては、その目的や目標を明確にしておくことも大切です。
「なぜインサイドセールスを導入するのか」「それによって何を目指すのか」という目的・目標が明確に設定されていなければ、せっかくインサイドセールスを立ち上げても適切な方向性での運用ができません。
インサイドセールスを運用していく指標として、目的や目標の設定は必須です。

また、設定した目的・目標を組織内でしっかりと共有することも重要です。これらを実務担当者レベルにまで浸透させておけば、組織全体が同じ方向を向いて、インサイドセールスの立ち上げに臨むことができます。
ゴールとなる目的・目標の設定は、担当者のモチベーション向上にも効果的でしょう。

ポイント3 周囲の協力を得る

インサイドセールスは、営業に関する広い範囲の業務に携わります。そのため、立ち上げにあたっては、業務に関連する多くの関係者の理解と協力を得なければなりません。
中でも、あらゆる顧客データを扱うマーケティング部門の協力は必須でしょう。マーケティング部門とインサイドセールスがうまく連携すれば、新規リードの獲得や育成はより効率的に行えます。

周りの協力を得るためには、インサイドセールス導入の目的・目標・具体的な体制・施策などを、関係者にはっきりと示す必要があります。その上で、インサイドセールスを立ち上げる有用性についての理解を求めましょう。
この意思疎通ができていないと、インサイドセールス導入について理解してもらえず、周りから十分な協力を得られなくなる可能性があります。立ち上げを成功させるためにも、まずは周囲の理解を高める必要があるのです。

ポイント4 決裁者がコミットする

インサイドセールスの立ち上げでは、上司となる決裁者や責任者が具体的なプロセスにしっかりコミットすることも重要です。
決裁者や責任者が導入の指示だけを行い、後は現場の担当者に任せっぱなしにしてしまうと、インサイドセールスの整備はうまく進みません。導入に伴う判断がその場で行えないため、それを決裁者に確認するために余計な工数や時間も発生してしまいます。

スムーズな立ち上げを目指すなら、決裁者や責任者はミーティングへの参加やこまめな進捗確認を行い、自身の責任のもとでインサイドセールスの導入を積極的に進めるべきです。
くれぐれも現場任せにはしないよう気をつけましょう。

ポイント5 リソースとKPIを整理する

インサイドセールスに限らず、組織に新たな仕組みを導入する際には、リソースを整理・確保する必要があります。「インサイドセールスを誰が担当するのか」「新しい人材を雇用する場合には、人件費が確保できるか」「システム導入の予算はあるか」など、人材・予算・時間などの点で十分なリソースを確保しましょう。
リソースが確保できていないにも関わらず、新たな仕組みの立ち上げを進めてしまうと、結果としてその導入・運用が失敗に終わる可能性もあります。
また、リソース確保のためには、まず必要なリソースを明確に把握する作業が必要でしょう。

リソースの整理・確保が完了したら、各担当者の具体的な役割や業務範囲を決めます。この時には、組織および各担当者が目指すべきKPIも設定しましょう。
リソースに応じた適切なKPIを設定できれば、それはインサイドセールスを軌道に乗せるための目標として機能します。

ポイント6 ターゲットを明確にする

インサイドセールスでは、ターゲットの設定が重要な役割を果たします。
電話やメールによるアプローチで顧客との信頼関係を築いたり、購買ニーズを顕在化させたりするのがインサイドセールスの役割ですが、そもそも自社の商品やサービスに合った適切なターゲットが設定されていなければ、十分な効果は発揮されません。
よって、インサイドセールスの立ち上げにあたっては、適切なターゲット設定が必要です。これがうまくいけば、案件化率や成約率の向上が見込め、インサイドセールスの導入は成功するでしょう。

適切なターゲット設定のためには、自社の顧客データをもとに顧客の特徴やニーズ、課題を洗い出す必要があります。そこから自社の商品やサービスにニーズを持つターゲットを絞り込んでいくと良いでしょう。

ポイント7 評価基準を決める

新たな仕組みを導入する際には、それに対する評価基準を設定しなければなりません。インサイドセールスの場合も同様で、インサイドセールスの評価をどのような枠組みで実施するかということは、事前に明確に決め、組織内で共有しておく必要があります。

またこの評価基準は、「インサイドセールス担当者の評価」と「インサイドセールス導入の成果」という2点で設定すべきでしょう。同時に、評価のタイミングについても決めておきます。
定期的な評価は、担当者のモチベーション維持はもちろん、プロジェクトの方向性確認にも効果的です。その効果を十分に得るためには、適切な評価基準を設けることが大切です。

ポイント8 トークスクリプト・マニュアルの作成

トークスクリプトとは、テレアポなどで用いる会話の台本のこと指します。
これは、テレアポ技術の標準化に役立ちます。トークスクリプトがあれば、まだ顧客への電話でのアプローチに慣れていない担当者も、比較的スムーズに会話を繋ぐことができるでしょう。

よって、電話で顧客にアプローチを行うことが多いインサイドセールス導入時には、トークスクリプトを作成しておくことをおすすめします。社内の成約率が高い営業担当者のトークを参考にしながら、トークのテンプレートを整備しましょう。

また、顧客対応のマニュアルも作成しておけば、組織内での統一的な顧客対応が可能になります。
これらのテンプレートやマニュアルは必要に応じて随時変更・更新を重ね、ブラッシュアップさせていくようにしてください。

ポイント9 できることから徐々に進める

ここまで複数のポイントをご紹介してきましたが、インサイドセールスを立ち上げる際には、「できることから徐々に進める」というスモールスタートの意識が大切です。
特に人数の点では、まずは少人数で業務を回していった方が、PCDAを素早く回せて、インサイドセールスの仕組みを構築しやすいでしょう。また、システムについても初めから高額かつ大規模なものを導入するのではなく、手軽なシステムから始めた方がリスクを低減できます。
ある程度の仕組みが構築され、運用が軌道に乗ってきたら、リソースを追加し組織の規模を大きくすることも検討しましょう。

最初にスモールスタートで様子を見ることで、大規模な失敗のリスクは回避できます。インサイドセールス立ち上げ時にはできることから小規模に初め、その結果からリソースの追加を適切に判断するようにしてください。

インサイドセールスの立ち上げの失敗事例

インサイドセールスは、正確なターゲット設定や明確な役割定義のもとで、その効果を発揮します。基盤となるターゲット設定や役割定義がきちんとできていないと、インサイドセールスの成果が得られず、その立ち上げが失敗に終わってしまう恐れがあります。

ここでは、インサイドセールスの立ち上げの失敗事例を2つ見ていきましょう。

ターゲット設定に失敗した事例

ITサービス企業のA社では、提供しているサービスの営業活動に苦戦していました。それまで行っていた紹介営業やWebマーケティング営業が頭打ちとなっていたのです。
そこで新規リードを獲得すべく導入したのが、インサイドセールスです。担当者が企業リストをもとに電話でのアプローチを行うことで、リードの獲得を狙いました。

しかし、毎月2,000件の先に電話しても、アポイントに繋がったのはたった14件。取得率0.7%という低さで、このインサイドセールス導入は失敗に終わりました。
その原因は、「適切なターゲット設定ができていなかったこと」にあると考えられます。

A社がターゲットに定めていた層は、本来A社のサービスに対するニーズが少ない企業ばかりでした。これまではトップダウンの紹介営業で案件化していたものの、そもそも適切なターゲット層にアプローチできていなかったのです。

このように、ターゲットが適切に設定できていない場合、せっかくインサイドセールスを導入しても、その効果は得られません。
ターゲット設定は営業の核です。新たな仕組みを構築する前に、まずはデータを分析し、自社のサービスにニーズを持つ層を的確に把握する必要があります。

役割定義に失敗した事例

広告代理店であるB社では、リソース不足による営業担当者の負担増加という課題を抱えていました。この会社では、営業活動の全てを営業担当者が担う従来型の営業スタイルが採用されており、人員も十分でないことから、営業担当者の負担が大きくなっていたのです。

そこで、この課題を解消するべく取り入れたのが、インサイドセールスの導入による営業活動の分業化です。営業活動をインサイドセールスとフィールドセールスに分け、担当者を限定的な業務に集中させることで、業務効率化を目指したのです。

しかし、この分業によって現場は混乱することとなりました。インサイドセールスとフィールドセールスとの連携もうまくいかず、結果として営業担当者の負担はさらに大きくなり、事態は悪化してしまいました。

この導入失敗の要因は、「インサイドセールスとフィールドセールスとの役割分担が曖昧であったこと」にあります。それぞれが担う業務範囲やその内容が明確に定められていなかったため、分業も連携もうまくいかなったのです。
この分業を成功させるためには、事前に各担当者の役割を明確に定め、ルール化し、それを周知しておく必要があります。また、行き当たりばったりではなく、仕組みを綿密に構築した上で計画的に導入を進めるということも重要でしょう。

インサイドセールスの立ち上げの成功事例

最後にインサイドセールス立ち上げの成功事例を2つご紹介します。

MAを活用した事例

IT認証サービスを提供するA社では、案件化数・成約数向上のためMAツールを導入したものの、成果が思うように出ないという課題を抱えていました。

そこでインサイドセールスを導入し、MAツールとインサイドセールスを連携させることで、フィールドセールスへ引き渡すリードの質を向上させようとしたのです。
MAツールで分析した情報をインサイドセールスへ引渡し、担当者がその情報をもとにリード育成を行うことで、ホットリードは創出しやすくなります。

結果として、この施策は成功し、有効ターゲット数は5倍に、有効商談率は2.5倍に増加しました。
MAツールとフィールドセールスの間に、リードを育成するインサイドセールスを配置することで、より確度の高いリード創出・育成ができる仕組みが構築されたのです。

外部サービスを活用した事例

ITサービス関連企業であるB社では、新サービスのリリースにあたって、その営業活動のためにインサイドセールス導入を検討しました。しかし、社内のリソースは十分でなく、またインサイドセールスを行うためのノウハウも有していませんでした。

そこでC社が選択したのが、外部企業によるインサイドセールスサービスの利用です。つまり、インサイドセールスを外部委託することにしたのです。
専門業者に外部委託すれば、自社にリソースやノウハウがなくても、速やかに質の高いインサイドセールスを開始できます。

この選択により、スピーディーにインサイドセールスを立ち上げたC社は、自社社員の負担なく、有効アポイント率を上げることに成功しました。営業担当者がフィールドセールスに集中できるようになったことで、提案や商談の質向上も実現できています。

インサイドセールスを導入したいけれど人的リソースやノウハウがないという企業にとっては、専門業者への外部委託も選択肢のひとつでしょう。

まとめ

インサイドセールスの立ち上げには注意しておかなければならない点がいくつかありますが、インサイドセールスを導入することにより、営業活動全体の効率化が期待出来ます。非効率な業務を取り除き、営業活動を新しいスタイルに変えることで、高い成果が期待できるでしょう。

また、インサイドセールスの導入には、ツールの活用が欠かせません。インサイドセールスとフィールドセールスの情報連携はもちろん、営業活動全体の効率化にも役立つツールには、様々なものがあります。
営業の効率化を目指すのであれば、インサイドセールスの導入だけに留まらず、自社に合ったツールの導入も検討してみてはいかがでしょうか。

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