高齢化社会が進む今、人材は以前に増して組織にとって非常に大切なものになりました。だからこそ、その組織に最適な方法で労務管理を行う必要があるのです。
しかし、労務管理の具体的な内容や注意点を理解出来ていない方も多いようです。
この記事では、労務管理の意味や目的とポイントについて説明しましょう。労務管理について理解を深めたいと考えているのなら、ぜひ参考にしてください。
労務管理とは
労務管理を一言で説明すると、社内の人材の管理のことをいいます。その範囲は会社によって変わりますが、労働者に関わる業務の大半が労務管理の業務であるといってもよいでしょう。
従業員が働く上で必要な最低限の管理から、従業員が快適に働くために提供するサービスなどの全てが労務管理に含まれます。
そのため優れた労務管理が出来ている会社は「働きやすい環境が整えられている会社」であるといえるため、人材が企業を見定める際の指標にもされるのです。
労務管理が適切に行われていない会社では、ハラスメント問題・過重労働・残業代の未払いなどの問題が発生しやすくなります。いわゆる「ブラック企業」と呼ばれてしまう可能性もあるでしょう。
そのような企業では優れた人材を手に入れることは難しく、人材の流出も抑えられなくなってしまいます。
労務管理の業務内容
一般的な労務管理の範囲は、下記のような内容のことです。その業務の具体的な仕事内容を理解しましょう。
①労働時間の管理
労働時間の管理とは、従業員がどのような勤務をしているのか、残業時間や休日出勤が多すぎないかなどの勤怠管理のことです。管理の方法は組織によってタイムカード形式、勤怠管理システムの利用など多くの種類がありますが、正確でミスのないものでなくてはいけません。
労務管理では従業員の労働時間が、労働基準法で定められている法定労働時間が守られているか、就業規則を逸脱していないかを常に確認します。
労務管理で管理するべき具体的な内容は下記となります。
- 出退勤時間
- 時間外労働時間
- 休憩時間
- 出欠勤日数
- 休日出勤日数
- 有給休暇取得状況
勤怠の状況は給与管理、過重労働問題以外にも人事評価につながる重要な項目です。残業超過や不正な手続きなどが行われないような監視も必要でしょう。
②給与管理
労働への対価である給与・賞与・各種手当などのことです。また、時間外労働や休日出勤には別途手当を支給しなくてはいけません。
具体的な給与管理の内容は下記になります。
- 基本給
- 諸手当
- 基準外手当
- 法定控除
人事評価制度が給与に連動している場合には、その評価条件を定めることも業務に含まれるでしょう。
給与管理は社内で行う場合と社外で実施する場合がありますが、個人情報の流出などのリスクも含めて、どちらが自社に最適な方法かを見極める必要があります。
③保険手続き
会社で働く従業員は多くの保険に加入する必要がありますが、保険の種類によっては任意加入のものもあるでしょう。
従業員の保険手続きの例は下記になります。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 労災保険
- 雇用保険
- その他の任意保険
保険に加入することにより、従業員が災害に巻き込まれたり病気になってしまった時にも、会社と従業員の両方が不利益を被る可能性を低く出來るのです。
④福利厚生業務
会社が従業員に任意で用意する福利厚生のことです。従業員の生活をより良いものにし、労働生産性の向上を期待するために用意されています。
福利厚生は応募する企業を探している人材に向けての、アピールポイントにもなるでしょう。
具体的には下記のようなものが福利厚生の例です。
- 住宅手当(家賃補助)
- 寮や社宅の提供
- 健康診断(法定以上の項目)
- 相談窓口の設置
- ジムやスポーツ活動に対する補助金
- 短時間勤務制度
- 男性従業員の育児休暇制度
- 託児・保育施設の設置
- 資格取得支援・セミナー参加費用補助・通信教育の提供
- アニバーサリー休暇・生理休暇・リフレッシュ休暇
- 社員旅行・食事の補助など
その他、その企業ならではのユニークな福利厚生を用意している企業も多いようです。現在は福利厚生自体をアウトソーシングするという手段もあり、外部に委託することでより豊富なサービスを用意出来るようになるでしょう。
⑤安全衛生管理
安全衛生管理は従業員の安全と健康を確保するために必要なものです。従業員が健康的に業務を続けられるよう、健康診断の結果を記録し、結果によっては保健指導や医師からの意見聴取を行います。
2015年よりメンタルヘルス対策として導入されたストレスチェック制度は、労働者が50人以上のであれば義務化されたこともあり、従業員の体だけでなく精神的な健康についての意識も高まっています。
⑥社員の生活に必要な諸手続き
従業員が組織で働く間には、いくつものライフステージが変わっていきmす。具体的には結婚・出産・住宅の取得などがその例です。
労務管理では従業員のライフステージの変更の度に扶養家族の変更をしたり、家族の保険などを用意するなどの手続きをします。
⑦その他の業務
企業によっては、下記のような人事に関わる内容も労務管理に含まれます。
- 人材の募集・採用
- 人事異動
- 社内研修の計画と実施
労務管理を行う目的
ここからは、労務管理が何のために実施されるのかを説明しましょう。
1 従業員に働きやすい環境を提供する
労務管理が整えられていない職場で働きたいと思う人材はいません。従業員に働きやすい環境を用意していれば、優れた人材も手に入りやすくなるでしょう。
高齢化社会が進む今では、人材を確保するためにも労務管理は欠かせないのです。
2 従業員のモチベーションを高める
働きやすい環境が整っていれば、従業員のモチベーションを高いままの状態で維持することが可能でしょう。モチベーションの高い従業員が揃っていれば、組織全体の労働生産効率を高められます。
結果的に、労務管理は会社の利益につながると考えてよいのです。
労務管理で気をつけるポイント
労務管理を行うためには、知っておくべきポイントがありますので、ご紹介しましょう。
ポイント1 法令・法律の遵守
労務管理には労働基準法・労働組合法・マイナンバー法など多くの守るべき法令・法律があり、十分な理解がなくてはこれらの法令・法律を遵守することは出来ません。将来的に、専門資格を取得する必要もあるでしょう。
ポイント2 個人情報の遵守
労務管理の業務では、従業員のプライバシーに関わることが多いため、個人情報の遵守が欠かせません。そうでなければ従業員からの信頼を得ることは出来なくなってしまうでしょう。社内はもちろん、労務管理を行うもの同士でも十分な注意が必要ということです。
ポイント3 コミュニケーション能力
従業員との信頼関係が大切な労務管理の業務では、社員とのコミュニケーションも非常に重要なポイントになります。労務管理業務は人材を管理する立場であり、従業員のことをよく理解していなくてはいけないのです。
ポイント4 常に改善を続ける意識を持つ
ハラスメント対策やIT技術の進化など、会社を取り巻く環境は常に変化していますので、労務管理についても現状を維持すればよいというわけではありません。
今の環境に合わせた最適な働き方、職場環境を従業員に提供出来るよう、常に改善を続ける気持ちが大切なのです。
まとめ
労務管理の意味やポイントについて分かりやすく説明いたしました。
労務管理は従業員のためにあるものですが、最終的には会社の利益につながります。優れた労務管理を行うことで従業員の生産性を向上し、自社をよりよい企業に成長させていきましょう。
また、労務管理では順守しなくてはならない法令も多く、給与の管理や保険の手続きなど、繰り返し何度も行う作業も多いでしょう。作業に抜けや漏れがないようにマニュアルや作業手順書を作成し、手順や注意点を明確にすると良いでしょう。