SOP(標準作業手順書)とは?マニュアルとの違い等も解説

SOP(標準作業手順書)という言葉を、見たり聞いたりしたことはあるでしょうか。
マニュアルのようなものですが、マニュアルとは違いがあります。

この記事ではSOPの活用メリットやマニュアルとの違いと、その作成手順について解説します。SOPを作成したいと考えているのなら、ぜひ参考にしてください。

目次

SOP(標準作業手順書)とは

SOPとは「Standard Operating Procedures」の略で、日本語では「標準作業手順書」と言います。

業務を行う上で最も標準的な手順を記載した指示書を指しており、誰が行っても安全かつ確実に業務を遂行させるために作成します。また、効率の良い業務の進め方を再現可能にするという目的もあります。

SOPは業務を遂行するために欠かせない情報のみが記載されており、製造業や医療・医薬の現場で使われることが多いものです。特に医療業界の治験では、SOPに基づいて業務を進めなくてはいけないと義務付けられています。

SOPの活用メリット

SOPがあることで企業が得られるメリットは次のようなものです。そのメリットを知れば、SOPの必要性を理解出来ます。

メリット1 業務が効率化する

SOPで標準的な手順が明らかになると、まだ経験の浅い従業員も業務フローが理解しやすく、作業方法が分からずに試行錯誤したり、他の従業員に都度確認に行ったりするなどの無駄な時間が発生しません。

また作業手順や判断基準が明確になっていれば、ミスや手戻りも少なくなり、作業がスムーズに進みます。

メリット2 業務の属人化を防ぐ

担当者しか手順を把握していないような業務は属人化しやすく、担当者が不在になった時に業務そのものが滞ってしまう恐れがあります。

SOPがあれば誰でも該当の業務を担当出来るようになるため、担当者不在時も問題なく業務が進むのです。

本来業務の属人化は企業にとってマイナス面しかなく、防ぐべき状態です。

メリット3 従業員の意識が向上する

SOPがあれば、従業員自ら分からない点を何度でも確認することができます。手順の習得がスムーズであれば、ミスなく作業を進めることができ、従業員のモチベーションを高く保てるのです。

すでに熟練の従業員であっても、SOPと照らし合わせて自分の作業を再確認したり、改善していったりすることで、担当業務の役割や重要性を再確認することができ、責任感や当事者意識も生まれます。

実際の作業担当者がSOPを作成・改善していくことで、より良い方法を考えていくことが組織風土として定着するため、その意味でもSOP作成は重要な役割を果たします。

メリット4 教育に必要な時間を短縮出来る

SOPを教育に取り入れれば、新入社員教育や引き継ぎの際に、教育に必要な時間が短縮できます。

SOPを使って基本的な知識や手順を先に習得してもらうことで、その後の教育がスムーズに進められるのです。知識がゼロの状態より、基本的な作業順序や作業を進める上での判断基準を知っていた方が、直接教育する時間は短く済みます。

また、教育を受ける方も、事前にある程度の知識がある方が、業務に対する理解がしやすくなります。

教育にかけられる時間が捻出できていれば良いですが、人員の入れ替えが激しいなど、教育の時間が多く必要な場合で、なかなか時間の確保が難しい場合はSOPによってその問題を解決出来るのです。

メリット5 安全性が向上する

特に危険が伴うような作業では、SOPが安全性の向上に役立ちます。

トラブルは、間違った手順や判断により発生します。SOPがあれば、必要な作業内容や作業を進める手順が明確になっているため、ミス自体が発生しにくくなります。ミスが発生しない状況では、安全性が脅かされることはありません。

些細なミスが従業員の怪我につながるような業務では、その安全性を確保するためSOPは必須と言えるでしょう。

SOPとマニュアルの違い

SOPとマニュアルはどちらも業務内容や手順を伝えるためにあることから、どちらも同じようなものなのではないかと考えている方もいます。

しかし実際には、それぞれに違った役割があるのです。

SOP

SOPは、作業内容や業務の標準的な手順を詳しく記載した指示書のことを指します。

業務を実際に担当する未習熟者のために作られるもので、誰がみても作業の内容や手順が理解できるようにします。そうすることで、担当者の力量に左右されずに成果物の質を標準化するのです。

そのためSOPは「必ず実施しなくてはいけない手順」のみを記載するという特徴があります。この点は業務の全体像や注意点・コツなども記載するマニュアルとは異なる点です。

マニュアル

マニュアルは、業務に関わるさまざまな情報を記載するものです。業務に関わりのある全従業員を対象に作られており、業務の全体像から業務を円滑に進めるための注意点やコツ、関係する他部署との関係性や過去の事故事例、トラブルシューティングなど多くの情報を含みます。その中には、具体的な作業の内容も含まれます。

つまり、SOPはマニュアルに包括されるもので、マニュアルの一部という捉え方もできるのです。

SOPの作成手順

SOPに決まった書式などはありませんが、次のような作成手順で進めれば伝わりやすいSOPが作れます。

手順1 作成する業務を選び、担当作成者・承認者を決定する

最初に、SOPを作成するべき業務を選定します。具体的には下記のような業務を優先してください。

・組織の目標と関わりのある業務
・企業の基盤となる業務
・急ぎで改善が必要な業務

SOPを作成する業務が決まったら、その業務のうちどのプロセスのSOPを作るべきか決めます。

この段階でSOPの作成者と承認者も決めてください。

例:A業務の取り扱い部品が多く、間違いが多いため、部品交換作業のSOPを作成する

手順2 SOPの目標を明らかにする

SOPは、成果物はもちろん作業手順を標準化するために作成されます。SOPを作ることで該当の業務をどのような結果に繋げたいのかを決めてください。

この際の目標は数値化されている方が、成果測定が行いやすくなります。

例:B業務で作成した部品の◯割以上が規定をクリアすること

手順3 SOPを利用するタイミングと利用者を考える

完成したSOPを使うのは誰か、またそのタイミングを考えます。SOPを利用する相手に合わせて専門用語や基礎知識をどの程度盛り込むべきかが変わるためです。

また、使用するタイミングが変われば、作業内容に関する表現も変わります。

手順4 SOPのスタイルを決める

該当業務の内容や利用者・タイミングに合わせてSOPのスタイルを決めていきます。

代表的なSOPのスタイルは下記の通りです。

①ステップ式

シンプルな箇条書きのSOPで、ボリュームの少ないSOPに適しています。

②フローチャート式

フローチャート図を使って作成するSOPは、複数の部署を行き来するような手順があるSOPや分岐のあるSOPに使いやすいです。

③段階的ステップ式

手順が多く、段階ごとに進んでいくSOPに適しています。

手順5 実際にSOPを作成する

SOPのスタイルが決まったら、本文を作成していきます。本文の他にも表紙・目次・用語集・参考資料を付けるようにしてください。

最後に承認者が内容を確認して問題がなければ完成です。

手順6 運用方法を決定する

SOPは作成しただけでは形骸化してしまう恐れがあります。定期的に改善・更新をしながら常に最新の情報にアップデートしなくてはいけません。

そのためには、運用担当者を選定して長期的にSOPを管理してください。

同時に、すぐ運用するのではなく、仮運用期間を設けて実務業務とSOPの内容が一致しているかを確認するのもおすすめです。

SOPを作成する際のコツ

SOPを作成する際には、誰が読んでも分かりやすい仕上がりにする必要があります。ここでは、SOP作成のコツをまとめました。

コツ1 簡潔に分かりやすくまとめる

作業をしながらSOPを確認する場合も考え、SOPは可能な限り分かりやすく見やすくする工夫をしてください。

SOPは業務を標準化するための指示書なので、何度も読み込みながら理解を進めるものではありません。具体的には次の点を意識することをお勧めします。

・一つの文章は短くシンプルにまとめる
・図や画像、写真、動画などを使って分かりやすくする
・重要な事柄は冒頭の方に記載して目立たせる
・必要のないことは削ぎ落とす

要点を伝えやすくするため、関連することでも直接関係しない参考の情報は入れないようにしてください。余計な情報が多いと重要な項目が分かりにくくなってしまいます。

コツ2 成果測定をする

SOPを導入した成果を測定するためには、まず仮運用をして目標が達成されているかを確認することをおすすめします。

数値化された目標を立てておくと、成果の測定が分かりやすくなります。成果が出ていることが分かったら、本運用に移行しましょう。

成果測定の結果は、現場の従業員にも共有しましょう。成果が出たことが分かれば、積極的にSOPを活用するようになり、SOPが形骸化するのを防ぎます。

コツ3 常に最新の状態を維持する

SOPは常に最新の状態でなくてはいけません。具体的には、システムがアップデートされたのに古いままになっていたり、使用する部品が変わったのに情報が更新されていなかったりするような状態のSOPは、ミスを誘発し、新人教育にも使えない資料になってしまいます。

SOPを常に最新の情報に更新するためには、管理担当者を決めておくことがポイントです。

また、最新ではないSOPは形骸化しやすくなります。正確な作業内容や手順が確認できないのですから当たり前でしょう。SOPを形骸化させず、活用されるSOPにしていくには、最新の状態であるということは必須と考えましょう

コツ4 ツールを利用する

これからSOPを作成しようとしている場合は、マニュアル作成ツールなどのツールを利用すると便利です。

ツールを利用すれば、デザインや書き方を考える必要がなく、SOPを作成する時間を短縮することが可能です。すでにツール内に用意されているテンプレートに当てはめて書いていけば、スムーズに作成が進むのです。

また、SOPを関係者に共有したり、最新版に更新したりすることも、ツール上で管理されたSOPであれば簡単に行うことが出来ます。

まとめ

SOPは、作業そのものはもちろん成果物の質を標準化させるために重要な役割を果たします。分かりやすいSOPを作るためには、簡潔かつ誰にでも分かる書き方で作業をまとめることが大切です。

ご紹介した作成のコツを参考に、自社に最適なSOPを作成してください。

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