「見える化」と「可視化」の違いとは?メリット・方法・ビジネスにおける事例等も解説

ビジネスに限らず、「可視化」という言葉は多くの場面で使用されます。また、近年では業務の改善や効率化を目指す過程などにおいて、「見える化」という言葉もよく使用されるようになりました。一見同じような意味に思える「可視化」と「見える化」ですが、これらの意味の違いは何なのでしょうか。それぞれどのような場面で使用するべき言葉なのでしょうか。

今回は、「可視化」と「見える化」の違いについて、具体事例を交えながら詳しく解説します。

目次

見える化と可視化の違い

見える化と可視化は、多少意味が異なります。

簡単に説明すると、実際に目に見えない物事・取り組み・結果を目に見える状態にすることが「可視化」、多くの人の目に入るようにすることが「見える化」です。

例えば、営業成績をグラフにしてトップセールスの社員に印を付けたとします。営業成績は目に見えないものなので、このグラフを作った段階で「営業成績を可視化」したと言えるでしょう。ただし、グラフを自分のパソコンにデータで保管しておくだけでは「見える化」には至っていません。

作成したグラフを印刷して張り出し、オフィスにいる誰もが目に付くようにする取り組みが「営業成績を見える化」した状態です。

このように「可視化」と「見える化」は、どちらも目に見えないものを目で見える状態にすることを指していますが、別の意味を持っているのです。

「見える化」を目指す企業が「可視化」までの工程で取り組みをストップしてしまうと、期待していた効果が得られなくなるでしょう。「可視化」「見える化」の意味の違いが理解出来れば、自社が求めている取り組みはどこまでなのかも明らかになります。

見える化の起源

「見える化」という言葉はトヨタ自動車で生まれました。トヨタ自動車では生産ラインに「あんどん」というランプを設置し、生産ラインで発生した異常にいち早く対応出来るようにしたのです。あんどんの点滅によって、発生した異常の種類も見分けられる工夫も施されました。

この取り組みが「見える化」の原点であり、それから長い年月をかけて「見える化」という言葉は他の企業や業種に広がっていきました。

現在では「見える化」はビジネスの場に限らず、誰もが知っている言葉になったと言えるでしょう。さまざまな形で「見える化」が進んでいます。

見える化と可視化のメリット

「見える化」「可視化」に取り組むことで企業が得られるメリットは次のようなものです。メリットを理解した上で「見える化」「可視化」の導入を検討しましょう。

メリット1 業務の全体像が把握しやすくなる

「見える化」が進んでいない企業では、担当者同士の業務の内容・進捗が分かりにくくなります。その結果、情報共有が滞り業務が属人化してしまうでしょう。

業務の全体像が明らかにならないことで、自分の担当している業務を単なる作業だと感じ、モチベーションが下がる社員も増え、担当者同士の助け合いも行われないでしょう。

「見える化」によって業務の全体像が容易に把握出来るようになれば、社員が団結して同じ方向を向き、業務を進められるのです。

メリット2 業務改善につながる

業務全体が把握できる環境なら、どの工程に改善点があるのか気が付きやすくなります。

具体的には、工程Bが遅れる事例が多く問題視されていたけれど、業務全体を見直したところ実際の原因は工程Bではなく工程Aにあったなどが分かりやすい「可視化」「見える化」の効果です。

発見した問題点の業務改善に取り組むことで、より効率的で生産性の高い業務にしていけるでしょう。

また、「可視化」によってリーダーが複数のチームの進捗を把握すれば、必要な時に適切な指示が出せるようになります。重大なトラブルの発生を予防する効果も得られるのです。

メリット3 人材が育ちやすい

全社員の業務内容や進捗など多くの情報を見える化することで、ベテラン社員の経験や知識が活用されやすくなりますその結果、業務経験が浅い社員でも、先輩の業務の進め方を見ながら成長出来るのです。

新入社員のモチベーションも高められ、同時に業務の属人化も防げるため、人材が育ちやすい環境が整います。

見える化と可視化の注意点

「見える化」と「可視化」によって情報が社員に伝わることで、多くのメリットが得られます。しかし、次のような点に注意しなければ、期待するメリットよりもデメリットの方が増えてしまいます。

注意点1 開示されている情報は多ければ良いというわけではない

「見える化」「可視化は」多くのメリットがある取り組みですが、多すぎる情報を共有すると、社員は自分の行動全てを監視されているような閉塞感を感じる恐れがあります。その結果、新しいアイデアや意見が言いにくい雰囲気になり、職場環境が悪くなるでしょう。

「見える化」「可視化」する情報は選定して良い効果が期待出来るものだけに絞ることをおすすめします。

注意点2 「見える化」「可視化」する目的を明らかにしておく

多くの企業が「見える化」「可視化」に取り組んでいるからと言って、目的が明らかではないまま導入を進めても期待する効果は得られません。

目的を明確化しておけば、何から「見える化」「可視化」するべきか、それによって期待する効果は何か、必要なルール変更は何かなどが分かるでしょう。

あくまで「見える化」「可視化」はゴールではなく、目的達成のための手段であることを忘れないようにしてください。

注意点3 「見える化」「可視化」が形骸化しないようにする

初めは明確な目的を持っていた取り組みでも、時間の経過とともにいつの間にか形骸化してしまうことがあります。「見える化」「可視化」の行動自体に満足するような状況は避けなければいけません。

そのためには「見える化」「可視化」の取り組みを定期的に評価し、常に現状に合ったシステムに改善していく必要があるでしょう。

見える化と可視化の方法

実際に「見える化」「可視化」を行うためには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは代表的な「見える化」「可視化」の方法について3つの方法を説明します。自社に適した取り組みから導入してください。

方法1 グラフ作成

代表的な可視化の方法として、営業成績や売上などの数字データをグラフやチャートにするという手段があります。数字が並んでいるだけでは把握しにくい内容も、一目で理解出来るようになるでしょう。色や文字サイズを工夫すれば、より内容が伝わりやすいものに仕上がります。

グラフやチャートを作成するためにはPowerPoint・Excelなどのソフトが使いやすく、すぐに作れる機能が備わっています。

方法2 マニュアル作成

お互いが担当する業務内容が理解出来ていない状態では「見える化」「可視化」を進めることが難しくなります。分かりやすいマニュアルを作成して業務を共有してください。

マニュアルは業務知識の少ない相手でも簡単に理解可能な内容にして、必要なら画像・図形・動画も活用すると良いでしょう。優れたマニュアルがあれば新人教育もスムーズに進むようになります。

方法3 専用ツールの導入

「見える化」「可視化」を進めるために利用される代表的なツールには、PowerPointやExcelなどのOfficeソフトがありますが、マニュアル作成や情報共有のための専用ツールを使うことで短時間で効率良く作業が進められます。

専用ツールであれば、使いやすさに優れたテンプレートが用意されているので、時間と手間をかけずに「可視化」「見える化」が叶います。

「見える化」「可視化」は目的を達成するための手段でありゴールではないので、その負担を最小限に抑える工夫も必要でしょう。

ビジネスにおける可視化の事例

ビジネスにおける「可視化」は、あらゆる場面で行われています。データをグラフ化したり、状態をイラスト化したりすることも、「可視化」です。
ここでは、ビジネスにおける「可視化」の具体事例をいくつか挙げてみましょう。

事例1
売上個数や来客人数、客層は、数字として把握していても、数字のままでは増減具合がイメージしにくい。そこで、売上個数や来客人数、客層をグラフなどで可視化し、数の増減が視覚的にわかるようにした。
事例2
監視カメラに映った人の動きを、静止している人と動いている人で色分けしながらアイコン化することにより、人の流れを可視化した。これは混雑状況の把握に役立っている。
事例3
全体像や手順が掴みにくい業務フローを、マニュアルツール導入によってマニュアル化した。全体の業務フローとその手順がツール上に図で可視化され、業務の標準化が進んだ。

ビジネスにおける見える化の事例

次に、ビジネスにおける「見える化」の事例を、実在の企業の例を挙げ、紹介していきます。

トヨタの事例
トヨタの生産ラインでは、異常を他者に知らせにくいという流れ作業の特性から、製品の不具合に対する即効的な対処ができないという問題点を抱えていた。
そこで生産ラインに設置したのが、異常通知ランプ「あんどん」です。異常発生時には、異常の種類に応じた色でランプが点灯する。このシステムにより、作業員全員が発生した異常とその種類にすぐ気づけるようになり、速やかな対処が可能になった。
通信系会社の事例
ネットワーク会社C社は、紙ベースの契約書類を参照したり、契約業務を進めたりするのに時間がかかっており、業務の無駄になっていた。
そこで、専用ツールを導入し、契約書類をデジタルで一元管理した。その中で書類作成から契約締結までの契約プロセスが目に見える形で表示され、必要に応じて通知されるようになった。
これにより、契約プロセスと業務の見える化が叶い、業務効率は向上した。

まとめ

ご紹介したように、「可視化」と「見える化」には意味の違いがあります。混同して使用されているケースもありますが、正確には「可視化」は目に見える状態にすること、「見える化」は多くの人の目につくようにすることであると覚えておきましょう。

「可視化」や「見える化」の方法にはいくつかの方法がありますが、業務フローを図で「可視化」したり、業務効率化のために業務全体を「見える化」したりするためには、マニュアル化が有効です。業務のマニュアル化は、業務の全体像を見える形にすることで従業員の理解を深め、業務効率化に役立ちます。

 

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